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2006.11.19 角屋
先日, 京都市下京区にある角屋をみてきました.
角屋は, 1952年に国の重要文化財に指定された, 日本で唯一現存する揚屋建築です. いまは「角屋もてなしの文化美術館」として一般公開されています.
揚屋というのは, 江戸時代に饗宴の場の施設として使用されていた施設で, いまでいう料亭のようなものです. 大座敷に面した広庭があり, 広庭には茶室が設けられ,
料理の準備をするための台所となる庫裏があります. 角屋の周辺は, 通称「島原」と呼ばれる花街として発展した地域です. 新撰組の隊士たちが足繁く通ったことでも有名ですね.
少しマニアックな話ですが, 新撰組初代局長の芹沢鴨が暗殺される直前におこなわれた宴会の会場, それが角屋だったそうです.
さて, 角屋は建築空間としても高く評価できます.
桧垣の間にある揺れるように湾曲する縦桟のデザイン, 青貝がちりばめられた壁の七宝亀甲模様, そして扇の間の天井など, 隅々まで行き届いたディテールの数々には本当に驚かされました.
でも, もっとも魅力的だったのは光の構成です. 昔は照明に蝋燭が用いられていたため, その煤で壁や天井が真っ黒になっています. でも, この黒さがいいんです.
というのも, 開口部から差し込む光が美しく引き立つからなのです.
例えば, 2階東側の開口部は横長の連続窓となっており, そこから障子を透けた光が入ってきます. この横長連続窓だけでもかなり爽快なのですが, 壁や天井の黒さが入ってくる光を強調し,
さらに水平性が増します.
また, 青貝の間や松の間では, 撥ね上げ天井とすることで, 軒先を支える柱をなくしています. 柱がないということは, 視界を遮るものがないということです.
つまり, 柱による影がでないのです. さらに, 柱に遮られることなく室内に入った光は, 壁や天井の黒さによって引き立てられ, 水平性が高まっていくのです.
このように, 角屋では開口部から入る光によって, 空間がすっきりと上下に切り分けられています. ここに, 私はモダニズムの空間構成を感じました.
タウトやグロピウスといった近代建築の巨匠たちが, 桂離宮にモダニズムの真髄をみて高く評価したように, 角屋においてもそれと同様の評価があてはまるような気がします.
というわけで, なかなかオススメな空間です. ただ, 2階まで見学するとけっこうな入場料になってしまいます. それでも見る価値は十分にあると思いますので,
興味のある方は実際に体験してみてください.
UZULAB-ma.
揚屋町通からみた角屋の外観
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