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いちょうのいえ
行き止まりでないこと. これが心地よい場所の条件だと考えている. 回遊性をもつ日本庭園が心地よかったり, どこまでも続くような路地に魅力を感じたりするのはこのためだろう.
そこで, 狭い敷地で心地よさを得るためには, 閉じて塞がないことが肝要だと考え, 設計に取り組んだ.
この敷地の東西には隣家が建て込んでおり, その隙間を縫って生活通路としての路地が通る, という下町特有の立地条件となっている. そのため, 近所付き合いが密接で,
周囲との距離が極めて近いという特性がある. 加えて, 敷地の前面道路にはイチョウ並木が続いており, これが地域の一体感をさらに高め, 生活をより豊かにする要素となっている.
このイチョウ並木は, この地で育ち, これからもここに住み続ける施主にとって, とても愛着のある存在でもある。
敷地の真正面に位置する1本の大きなイチョウをきっかけに設計を進めた. 生活の場から常にイチョウが意識できるようにと, イチョウを借景とした空間構成のスタディを繰り返した.
その回答として, 南北に抜ける部屋「いちょうみち」を用意し, この「いちょうみち」が生活の軸となるように諸室を配置することにした.
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