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2004.12.29 平面図を旅する
先日, 京都造形芸術大学通信教育部の学生向け機関誌「雲母」に寄稿しました.
素敵な建築の中をぐるぐると歩きまわると, なんとも言えない幸福感に浸ることができます. 歩いていく先に美しいものが見えたり, 思ってもみなかった方向から光が降り注いだりと幸せな発見が多くあります.
先日, サンフランシスコを旅したのですが, その時も幸せな気分に浸ることができました. 巨大なアトリウム(建築の内部に設けられた吹き抜けを持つ広場のこと)と映画にも出てくるシースルーのエレベータで有名なハイアット・リージェンシー・ホテルを歩きました.
写真を見てもらうとわかるのですが, 巨大な吹き抜けに面して客室が並び, まるで屋外にいるかのような空間が建築内部にできあがっています. この建築を手掛けたジョン・ポートマンは,
アメリカ各地にいくつものホテルをつくっていて, 現代的な意味でアトリウムと呼ばれる空間を最初につくった人でもあります.
アトリウムの巨大さや豪華さは行く前に想像していた通りでしたが, 意外だったのはその客室フロアの開放感でした. ホテルという雰囲気にぴったりなアトリウムから,
特徴的なエレベータに乗って客室フロアにつきます. そしてアトリウムを見下ろしながら自分の部屋まで歩きます. 通常のホテルであれば、長く続く薄暗い廊下を歩くことになるのですが,
ここではゆったりと周囲を眺められます. さらにはアトリウムを特徴付けている緑が手摺りから垂れ下がり, 目を和ませてくれます. このように歩きながら楽しませてくれるのがよい建築ではないかと思っているので,
すっかり幸福な気持ちになりました.
ただし事前に平面図を見ておけば, 廊下のこの開放感をある程度予測できたのではないかと思います. 旅をするのと同じくらい, 書物の中の建築を歩きまわることも楽しいことです.
歩いている時に何が見えるのか, 先にどんなものが待ち受けているのかということを想像しながら平面図を辿ります. 実際の旅にはかなわないかもしれませんが,
家でぬくぬくとくつろぎながら旅が出来るのです. 過去の名建築, 最新の現代建築, そして自分が設計した建築と旅する場所はたっぷりとあります.
建築をつくるときには想像力が重要だと思います. 誰も思い付かないものをつくるための創造力だけでなく, 自分が考えた建築が歩きやすいかどうかを想像する力が大切です.
それをもってすれば, 今まで見えなかったものが見えるようになります. みなさんも架空の建築を旅して, 平面図から空間を想像することを楽しんでみてください.
UZULAB-shi.
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