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2007.05.01 ノマディック美術館
アテネのパルテノンしかり, イスラムのモスクしかり, そして日本の伊勢神宮しかり. 神殿が建築家の心を奪った例は数多くあります. そして, 神殿から得たインスピレーションは名作を生み出すきっかけとなったりもします.
そんな神殿に通じる空間を体験しました.
先日,ノマディック美術館に行ってきました. ノマディック美術館は, カナダ出身のアーティスト, グレゴリー・コルベールの展覧会「ashes
and snow」専用の移動式美術館です. 「ashes and snow」は, これまでニューヨークとサンタモニカを巡回し, 現在は東京のお台場にて開催されています.
ノマディック美術館を設計したのは, 紙管を構造体として用いた教会や液晶テレビ「アクオス」の宣伝に出てきた住宅などを設計したことで有名な建築家の坂茂です.ノマディック美術館において坂は,
貨物用コンテナと紙管, そしてテント, というチープな素材を用いて幻想的な空間を演出しています.
貨物用コンテナは, 市松模様に積み上げられ, これが長手方向の構造体として壁を形成します. そして, コンテナの壁に挟まれた空間には, 紙管による柱と屋根のトラスが連続的に配置されています.
中空に浮かぶコンテナと神殿の内部のような列柱による象徴性. これらが暗い空間のなかでいっそう引き立てられ, 展示物との相乗効果により, きわめて幻想的な空間となっているのです.
加えて, お台場を吹き抜ける強い風が内部空間の異様な雰囲気をさらに増長していました. 立っているのもやっと, というくらいの突風でバタバタと屋根のテントがはためき,
展示作品はゆっくりと揺れ続けます. 台風の日にテントで夜を明かしたときのような, 不安と緊張感で鳥肌が立ちます. まさに神殿のようでした.
とにかく体験すると内部空間のスゴさがわかります. 会期は6月24日ですのでどうぞ行ってみてください.
UZULAB-ma.
ノマディック美術館の外観. とてもチープな素材で仮設的な雰囲気を醸し出していますが, 内部空間はスゴイぞ.
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